自律神経から考えるガンステッド・カイロプラクティック

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自律神経とは?
自律神経とは、生命の維持するためにあらゆる体の働きをコントロールする神経のことを言います。簡単に言うと自分の意思とは関係なく、無意識に24時間休むことなく働いてくれている誰よりも信頼できる味方です。
しかも誰にでも元々備わっている本来のリズムで、その働きを高めるために努力することは必要ありません。自律神経は、意思によってその働きを変えることはありません。
例えば、心臓を止めること、汗を止めること、胃腸の働きを止めること、体中の血流を止めること、鳥肌を止めること、すべて意識していないのにちゃんと働いてくれています。
暑いと自発的に汗をかき、寒いと自動的に震えて体温を一定にします。血液や呼吸や代謝や体温調整などの自分の意思でコントロールできないことを24時間休むことなく働いているのが自律神経です。
自律神経は、呼吸・脈拍・体温・消化・免疫・ホルモンをはじめ生命維持にかかわるあらゆる働きを支配しており、私たちの体を構成する約60兆個の細胞すべてを無意識のうちに調整しているとても大事な神経なのです。
自律神経が安定していることが、本来の体の機能が正常であることを意味しています。
2種類の自律神経
自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」があります。この2つは交代して働いています。
どちらかが働いている間は、もう片方の働きのスイッチはオフになります。交感神経は車で例えるとアクセルの働きがあり、体に活力を与えてくれます。副交感神経はブレーキの役割があり、ケガの修復などの体を休めるときに働いています。
心と体が最も良い状態で働くには、この交感神経と副交感神経の両者がバランスのとれた状態です。この2つの神経の働きは、1日の中で優位になるタイミングが異なり、アクセルだけでは、体は暴走してしまいますし、ブレーキだけでは動きません。
日中は交感神経が優位になり適度な緊張感をもちつつ、夜は副交感神経が優位になりリラックスして休息できる状態が理想的なバランスですが、交感神経が優位になり過ぎるとリラックスモードに切り替えることができません。
反対に、副交交感神経が優位になり過ぎると、常にやる気スイッチがなかなかオンになりません。この両者のスイッチのオンとオフがしっかりとできる状態こそ、私たちの健康を維持する為に最も重要になります。
ガンステッド・システム
Dr.ガンステッドは、第一に自律神経に重点を置いて臨床を行うことが重要であると考えました。
アクセルとブレーキの働きを同時に行えば、車は前には進まないのと同じように、私たちの体もまた問題個所の修復へと前進することはありません。
私たちの脳は、1秒で300万もの情報を整理しています。
脳は、その情報を基にして様々な指令を体に送り、問題への対処を行っています。また、それらの膨大な情報に優先順位をつけて体にとって最も重要なものから対処を行っていきます。
しかし、サブラクセーションのような神経へのストレスや、自律神経のバランスを考えずに過剰に神経へ刺激を加ええる行為が、正常な体の機能を妨げる要因になると考えました。
Dr.ガンステッドは、体の治癒力が最大限に発揮するためには、同じ日に交感神経と副交感神経を混合してアジャストメントを行うことはせず、どちらの機能に問題があるか様々な検査を行い、アプローチを特定することが、最も正確はテクニックであると定義しました。
また、Dr.ガンステッドは、臨床経験と膨大な症例を元に後頭骨~C5、仙骨、腸骨、尾骨は副交感神経、C6~L5は、交感神経が支配していると定義しました。
ガンステッド・アプローチ
① 問診&ヒヤリング(History Taking)
ガンステッド・テクニックでは、全脊柱から問題の根本原因を特定していきます。症状のある場所に対しての問診やヒヤリングでは、全体像が見えてきません。
そのために、患者さんの全体像を把握することができる問診やヒヤリングの技術が必要とされます。また、問診やヒヤリング時では、筋骨格のバランスの乱れによって発症している問題なのか、または自律神経のバランスの乱れによって発症している問題なのかをしっかりと情報収集することが正確な計画を立てることに繋がっていきます。
まず、問診や様々な検査から患者様の自律神経の状態を分析します。交感神経が過剰になり副交感神経へのスイッチに切り替わることができない状態なのか、副交感神経が過剰になり交感神経へのスイッチに切り替わることができない状態なのかを判断します。
ガンステッド・カイロプラクティックでは、この2つの神経システムの状態を把握した上で、アジャストメント部位の特定を行います。
このように、ガンステッド・カイロプラクティックでは、アジャストメントの効果を最大限に発揮する為に神経システムに重点を置いて問診とヒヤリングを行います。
② 5つの検査と分析(Five Criteria)
次に関連する椎骨とサブラクセーションの特定を行い、正確なリスティングの特定を行います。
・視診(Visualization)
患者さんが治療院のドアを開けた瞬間から検査は始まります。肩や耳の高さの違いや腰の位置の左右差に加えて姿勢や歩き方など筋骨格の異常を確認します。
またサブラクセーションの兆候である、筋肉病理や組織病理など上皮の変化などの検査を行うのが視診になります。これらの情報をレントゲンや触診で得られた情報と合わせて総合的な判断を行います。
・体表温度の測定(Instrumentation)
背骨に沿って温度センサーを備えたナーボスコープという器具を使用し、不均一な温度変化がある箇所をピンポイントで的確に見つけ出します。
サブラクセーションの兆候である、神経病理の検査を行うのが体表温度の測定になります。また、体表温度の測定は、サブラクセーションが有るか無いかを高い確率で知る客観的な検査を行うことが可能になります。
・静的触診(Static Palpation)
静的触診とは、患者さんを動かさずに、脊柱と骨盤の皮膚状態の検査を行います。サブラクセーションの兆候である組織病理の検査を行うのが、静的触診になります。
体表の凹凸、肌の質感、温度(熱感&冷感)、しこり、筋肉の硬直、腫れ、炎症、圧痛などの軟部組織の異常の確認を行います。
・動的触診(Motion Palpation)
動的触診とは、体表温度の測定によって見つけられた各脊椎のリスティングを決定するために行われます。サブラクセーションの兆候である、運動病理の検査を行うのが動的触診になります。
様々な方向に動かしながら脊椎や骨盤の動きを確認し、どの方向に動きやすいか、または動きにくいのかを確認します。また、アジャストメントの効果を再確認する場合の施術後のチェックにも行われます。
・全脊柱でのレントゲン評価(X-Ray)
レントゲン画像は、皆さんがどのような環境でどのような生活をしてきたのか教えてくれます。姿勢の癖や、サブラクセーションがどれくらい放置されたか分析することが可能になります。
レントゲン画像を評価することで、サブラクセーションの正確な位置の特定、そしてそのサブラクセーションがどの段階であるか分析し、ケアの計画を決めていきます。
正面と側面から撮影された全脊柱のレントゲン画像は、各脊椎と骨盤の詳細な分析を可能としてくれます。また、レントゲン評価は触診で得られた情報をより具体的で正確なものとしてくれます。
骨の変性や椎間板の状態を視覚的に確認できるため患者様への説明時にも使用されます。また、その他の潜在的に潜んでいる骨格上の病理的な問題点の特定にも役に立ちます。
③ 神経システムと椎骨の特定(Pinpoint Establish)
ガンステッド・カイロプラクティックでは、この交感神経と副交感神経の2つの神経システムの状態を把握した上で、アジャストメント部位の特定を行います。
アクセルを踏み続けている交感神経が過剰な状態であれば、副交感神経を刺激してブレーキを促します。この場合は、副交感神経を支配している部位の後頭骨~C5、仙骨、腸骨、尾骨のサブラクセーションが対象となります。
反対にブレーキを踏み続けている副交感神経が過剰な状態であれば、交感神経を刺激してアクセルを促します。この場合は、交感神経が支配している部位のC6~L5のサブラクセーションが対象になります。
このように、ガンステッド・カイロプラクティックでは、アジャストメントの効果を最大限に発揮する為に神経システムと椎骨の特定を行います。
④ アジャストメント
すべての必要な検査と分析を行った後、アジャストメントを行う準備が整います。
アジャストメントの最も重要なところは、主訴に対してどの椎骨を1番にアジャストメントする必要か判断し、優先順位をつけて問題の起こっている箇所にのみ正確で的確なアジャストメントを行うことです。
最初の問題の原因が筋骨格から起きているのなのか、内分泌の亢進または、抑制から起きているものなのか、交感神経が過剰になって起きているものなのか、副交感神経が過剰になって起きているものなのか、すべての要素を考慮した上で優先順位を特定してアジャストメントを行うのがガンステッド・カイロプラクティックになります。
また、いつ交感神経へのアプローチから、副交感神経へのアプローチに移るかは、患者様によって異なりますが約4~10週間、交感神経へのアプローチを行い状態が安定してから交感神経へのアプローチを行うことが理想的な方法になります。
副交感神経サブラクセーションの兆候
- ・後頭骨~C5、仙骨、腸骨、尾骨の神経支配部位の問題
- ・筋の痙攣や痛み
- ・臓器の機能亢進
- ・内分泌の亢進
- ・脳神経3,7,9,10の問題
- ・迷走神経の問題
交感神経サブラクセーションの兆候
- ・C6~L5の神経支配の問題
- ・筋の麻痺やしびれや低下
- ・臓器の機能低下
- ・内分泌の低下

塩川 雅士

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