ガンステッド・テクニックの特徴?

Contents
① 2つ理論の確立
Dr.ガンステッドは、脊椎を解剖生理学的に神経と筋骨格の複合体と見るべきだと考え、 2つの理論を確立しました。
土台理論(The Level Foundation)
人間は2本足歩行の動物であるため立位時に脊椎には重力がかかります。脊椎の最も下にある土台、仙骨が基盤となりその上に第5腰椎が乗り、順番に第5腰椎という土台の上に第4腰椎、第4腰椎の土台の上に第3腰椎となり最後に環椎という土台の上に頭蓋骨がトップに乗り、脊柱の安定性を維持しています。
脊柱を建物に例えると、土台がしっかりしていることは耐久性、耐震性にとって非常に重要なことです。ほんのわずかな土台のゆがみが、建物全体の大きなゆがみを生じる原因になります。いわば、身体の土台が骨盤です。骨盤が安定していると脊柱は最もバランスのとれた状態を保つことができます。
このように、Dr.ガンステッドは脊椎のどこのレベルにおいても土台が崩れてしまうと上位に影響を与えてしまうと考え、身体にとって土台が最も重要であるという土台理論を確立した。
椎間板理論(The Level Disc Theory)
椎間板は、脊椎の中で最も重要な構造物であると考え、健常な脊椎では椎問板はどこをとっても等しい高さでなければならない、つまり正常な椎間板は平行であるべきと考えた。
すなわち、土台のゆがみが椎間板にストレスを与え、椎間板が膨れたり、傾いたりすることで周辺の神経組織に炎症が起きる。
そして、身体の様々な機能のコントロールを行っている神経の伝達を妨害し、痛みやしびれといった感覚のみならず、自律神経のバランスや関連する各臓器にも影響を与えるようになると考えた。そして身体にとって椎間板が重要であるという椎間板理論を確立した。
② 仙腸関節の可動性を発見
Dr.ガンステッドは、仙腸関節が動くと唱えた初めてのカイロプラクターです。
当時の医学書でもカイロプラクティックの学校でも仙腸関節が動くという概念はありませんでしたが、Dr.ガンステッドは、仙腸関節へのアジャストメントを行うことで、仙腸関節に動きがあることと、それによって神経の圧迫が生じること、そしてアジャストメントによって正常な動きに戻すことができると証明しました。
③ サブラクセーションを正確に見つけ出すシステム
5つの検査と分析(Five Criteria)
・視診(Visualization)
患者さんが治療院のドアを開けた瞬間から検査は始まります。肩や耳の高さの違いや腰の位置の左右差に加えて姿勢や歩き方など筋骨格の異常を確認します。
またサブラクセーションの兆候である、筋肉病理や組織病理など上皮の変化などの検査を行うのが視診になります。これらの情報をレントゲンや触診で得られた情報と合わせて総合的な判断を行います。
・体表温度の測定(Instrumentation)
背骨に沿って温度センサーを備えたナーボスコープという器具を使用し、不均一な温度変化がある箇所をピンポイントで的確に見つけ出します。
サブラクセーションの兆候である、神経病理の検査を行うのが体表温度の測定になります。また、体表温度の測定は、サブラクセーションが有るか無いかを高い確率で知る客観的な検査を行うことが可能になります。
・静的触診(Static Palpation)
静的触診とは、患者さんを動かさずに、脊柱と骨盤の皮膚状態の検査を行います。サブラクセーションの兆候である組織病理の検査を行うのが、静的触診になります。
体表の凹凸、肌の質感、温度(熱感&冷感)、しこり、筋肉の硬直、腫れ、炎症、圧痛などの軟部組織の異常の確認を行います。
・動的触診(Motion Palpation)
動的触診とは、体表温度の測定によって見つけられた各脊椎のリスティングを決定するために行われます。サブラクセーションの兆候である、運動病理の検査を行うのが動的触診になります。
様々な方向に動かしながら脊椎や骨盤の動きを確認し、どの方向に動きやすいか、または動きにくいのかを確認します。また、アジャストメントの効果を再確認する場合の施術後のチェックにも行われます。
・全脊柱でのレントゲン評価(X-Ray)
レントゲン画像は、皆さんがどのような環境でどのような生活をしてきたのか教えてくれます。姿勢の癖や、サブラクセーションがどれくらい放置されたか分析することが可能になります。
レントゲン画像を評価することで、サブラクセーションの正確な位置の特定、そしてそのサブラクセーションがどの段階であるか分析し、ケアの計画を決めていきます。
正面と側面から撮影された全脊柱のレントゲン画像は、各脊椎と骨盤の詳細な分析を可能としてくれます。また、レントゲン評価は触診で得られた情報をより具体的で正確なものとしてくれます。
骨の変性や椎間板の状態を視覚的に確認できるため患者様への説明時にも使用されます。また、その他の潜在的に潜んでいる骨格上の病理的な問題点の特定にも役に立ちます。
④ 科学的なデータや臨床データに基づくケア計画の確立
脊柱の全体像の段階と椎間板の段階の2つの分析を行うことでケア計画を特定するときに参考にします。まず、脊柱の全体像を1段階から3段階に分け初期集ケアのペースを特定します。
1段階では、初期集中ケアの1ヶ月は週1回、第2段階では、週2回、第3段階では、週3回のペースから始めていきます。サブラクセーションが放置された時間に比例して段階と来院頻度は上がって行きます。
椎間板の段階は1~6段階に分かれており、この段階も同様にサブラクセーションが放置される時間に比例して段階と来院頻度は上がって行きます。
D1とD2段階では、サブラクセーションが放置されてから時間が経過していないことから、初期集中ケアの1ヶ月は、週1回から始めていきます。
D3とD4段階では、サブラクセーションが放置されてから約2~10年経過しているので、初期集中ケアの1ヶ月は週2から始めていきます。
D5とD6段階では、サブラクセーションが放置されてから約10年~15年以上経過しているので、初期集中ケアの1ヶ月は週3回から始めていきます。
このようにレントゲンを分析することで来院頻度を正確に特定することが可能になります。また、レントゲンを患者様へ説明することで互いに納得してケアを進めていくことが可能になります。
正常
- 正常なカーブ
- 正常な軟部組織
- 可動域制限なし
- 正常な神経組織
第一段階
- カーブの減少
- 軟部組織の緊張
- 軽度の可動域制限
- 神経組織の刺激
第二段階
- 椎間板スペースの減少
- 関節面や椎骨の変性
- 中度の可動域制限
- 神経組織の損傷
第三段階
- 重度の関節面や椎骨の変性(癒合)
- 神経組織の萎縮
- 重度の可動域制限
- 神経組織の委縮
⑤ 椎間板の段階と改善
正常 | ![]() |
・正常な椎間板。 ・十分な椎間孔スペースの確認。 |
D1:急性期 | ![]() |
・むち打ちやぎっくり腰のような椎間板に損傷が起き、代謝が増大し水分吸収が過度に行われ膨張している状態。 ・このステージでは、炎症により神経が刺激され痛みを伴います。 ・この初期の状態でケアを受ける事で炎症がすぐに落ち着き、椎間板スペースは改善していきます。 |
D2:6ヶ月経過 | ![]() |
・椎間板の変性が始まる第1ステージで、サブラクセーションが6ヶ月~2年放置されている状態。 ・後方部の椎間板スペースが減少 後下方に傾く 髄核が前方に移動。 ・定期的なケアにより、髄核が元の場所に戻ることで椎間板スペースは改善。 |
D3:2~5年経過 | ![]() |
・椎間板の変性が始まる第2ステージで、サブラクセーションが2~5年放置されている状態。 ・後方部の椎間板スペースが著しく減少し、後下方に傾き髄核が前方に移動。 ・定期的なケアにより、髄核が元の場所に戻ることで椎間板スペースは改善。 |
D4:5~10年経過 | ![]() |
・椎間板の変性が慢性化したステージで、サブラクセーションが5~10年放置されている状態。 ・椎間板の水分は放出され、椎間板スペースの元の厚さの2/3まで減少し、骨の変形が始まる。 ・上下の椎骨が接近し可動性を制限、また骨を変形させ圧が加わっている箇所の補強。(神経への負荷を避けるための防御反応) ・ケアをしても椎間板スペースや骨の変形には変化が見られないが、神経機能が改善することは可能。 |
D5:10~15年経過 | ![]() |
・椎間板の変性が慢性化したステージで、サブラクセーションが10~15年放置されている状態。 ・椎間板の水分は放出され、椎間板スペースの元の厚みの1/3まで減少し、骨の変形が始まる。 ・上下の椎骨が接近し可動性を制限、また骨を変形させ圧が加わっている箇所の補強。(神経への負荷を避けるための防御反応) ・ケアをしても椎間板スペースや骨の変形には変化が見られないが、神経機能が改善することは可能。 |
D6:15以上年経過 | ![]() |
・椎間板の変性が慢性化した最終ステージで、サブラクセーションが15年以上放置されている状態。 ・椎間板の水分は放出され、椎間板スペースはほぼ消失し、骨が自然癒合を起こし、可動性が著しく減少。 ・上下の椎骨が接近し可動性を制限、また骨を変形させ圧が加わっている箇所の補強。(神経への負荷を避けるための防御反応) ・ケアをしても椎間板スペースや骨の変形には変化が見られないが、神経機能が改善することは可能。 |
⑥ サブラクセーションとカンパンセーション(補正作用)との区別
カンパンセーションとは、サブラクセーションによって起こる体の補正作用のことを意味しています。例えば、下記の図のように右側の椎間板が膨隆し、左に体が傾いています。
しかし、私たちの体は、常に中心を維持しようとする補正する働きが加わり、上部は右へと傾くことでバランスを図ります。このバランスを図かる場所がカンパンセーションとなります。
通常、カンパンセーションの個所は、傾きが大きく、多くの場合症状が現れることが多いですが、カンパンセーションは、サブラクセーションによって起こるもので、アジャストメントの対象ではありません。
臨床において、サブラクセーションとカンパンセーションの区別こそ、臨床において最も重要なこととなります。

塩川 雅士

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